蕎麦 じきさい | 職人が紡ぐ香り高い手打ち蕎麦の世界

北海道・福井・茨城から届く蕎麦粉を季節ごとに選び抜く

きたわせ蕎麦、福井県の在来種、常陸秋そば——蕎麦 じきさいでは、これら産地の異なる蕎麦粉を時期や状態に応じて切り替えている。きたわせ蕎麦の軽快な口当たりに対し、福井の在来種や常陸秋そばは甘みと香りが濃く、季節によって一杯の印象がはっきり変わる。手挽きの石臼で粉にするところから始まり、手打ちで仕上げるまで職人がすべての工程を担う。細切りにされた麺はつけ汁への絡みまで逆算して打たれており、何杯食べても重さを感じにくい設計になっている。

個人的には、訪れる時期によって蕎麦の表情がここまで違うのかと素直に驚いた。香りの立ち方や喉を通るときの余韻が、前回と明らかに異なっていた。備前という土地で、産地リレーのように蕎麦粉を使い分ける店は珍しく、常連が季節ごとに足を運ぶ理由もそこにあるようだ。「新蕎麦の時期だけでなく、夏場もちゃんとおいしい」という声が目立つ。

鴨せいろの核心は自家栽培ネギと鴨脂の一体焼き

蕎麦 じきさいの鴨せいろは、鴨肉と自家栽培のネギを同時に焼くところから始まる。鴨の脂がネギの繊維に入り込み、甘みと旨味が一段引き上がる仕組みで、この工程がつけ汁全体の厚みを決定づけている。香りの強い細切り蕎麦をくぐらせると、出汁・鴨・ネギが一口で重なり合う。冷たい麺と熱いつけ汁の温度差も計算に入っており、食べ進めるほどに味の変化を楽しめる構成になっている。

春菊や人参、小エビなどを使ったかき揚げも、畑で採れた野菜をそのまま揚げるスタイルで提供されている。大根やごぼうといった根菜類は季節に応じて入れ替わり、同じメニュー名でも中身が少しずつ違う。天ぷらだけ追加注文するリピーターもいるらしく、蕎麦との組み合わせを毎回変えて通う人もいると聞く。薬味にも自家栽培の素材が使われており、一皿ごとに畑の気配がにじむ。

カウンターから眺める職人の手仕事

南側に配置された厨房に面したカウンター席では、蕎麦を打つ一連の動作を間近で見ることができる。一人客でも気兼ねなく座れる距離感で、木を基調にした内装が視覚的にも落ち着く。北側の窓際テーブル席には自然光が入り込み、横長のレイアウトが奥行きよりも開放感を優先した設計だと感じる。全席禁煙で、家族連れにも使いやすい。

「子ども連れでも居心地がよかった」という利用者の感想がいくつか見受けられる。派手な装飾を排した空間は料理に意識が向きやすく、蕎麦の香りがそのまま届く環境として機能している。席数はそれほど多くないため、昼時は早めに訪れるほうが無難だろう。

伊部駅徒歩約5分、備前散策の途中に立ち寄れる立地

ざる蕎麦、豚せいろ、かき揚げせいろなどメニューは冷・温のつけ汁系を軸に構成されており、麺の大盛りや追加注文にも対応している。食後には蕎麦湯が出てくるため、出汁の風味を最後まで味わい切れる流れが組まれている。冷たいつけ汁でまず麺そのものの香りを確かめ、温かいつけ汁で味の奥行きを試す——そんな食べ比べも一つの楽しみ方になる。細切り麺の喉越しが軽いぶん、つい追加を頼みたくなる。

伊部駅から徒歩約5分で、駐車場も備えているため電車・車どちらでもアクセスしやすい。備前焼の窯元や美術館が点在するエリアに位置しており、散策の合間に立ち寄る観光客も少なくないという。「窯元巡りの昼食にちょうどいい」と感じる利用者が多いようで、地域の文化圏と自然に溶け込んだ一軒になっている。蕎麦湯まで飲み干してから、午後の備前歩きに出かける——そんな一日の使い方が似合う場所だ。

備前 蕎麦

ビジネス名
蕎麦 じきさい
住所
〒705-0001
岡山県備前市伊部2343−1
アクセス
伊部駅から徒歩約18分
TEL
070-8543-5181
FAX
営業時間
11:00~14:00
L.O.:13:30
定休日
火,水,木,金
URL
https://jikisai.jp