和出汁と味噌がスパイスの入り口になる、ことことの料理
スパイスカレーの定義を少し広げたところに、SPICEUPCURRYことこと、は立っている。料理の出発点は日本の発酵食品——和出汁と味噌——で、そこに本格的なスパイスを重ねて仕上げる手法は、食べログのスパイス百名店出身の料理人が持ち込んだものだ。刺激を楽しむのではなく、旨味と香りの折り重なりを楽しむスタイルは、スパイス料理を「辛いもの」として遠ざけていた人への橋渡しにもなっている。1,050円の和出汁と味噌チキンカレーが定番で、常時2種類の期間限定メニューが並ぶ。
「スパイスカレーなのに、なぜか落ち着く味だった」という感想が、来店者のコメントで繰り返し出てくる。発酵食品の旨味が持つ包容力が、スパイスの個性を押さえつけるのではなく、むしろ際立たせているように感じた。
昼飲みも、夜のペアリングも——時間の使い方を選べる一軒
ランチは月・水〜日曜の11:00〜15:00、ディナーは木〜日曜の18:00〜21:00という営業体制で、昼飲みにも対応している。ディナーは和の一品料理×スパイスという構成にシフトし、クラフトビールとの組み合わせを楽しむ時間帯になる。締めに提供される和風ビリヤニ——発酵食品でアレンジしたインドの炊き込みご飯——は、この店のコンセプトを一皿に凝縮したような存在だ。昼のカレーとは別軸の楽しみが夜にあることで、同じ客が違う目的で再訪できる。
「ランチで来てから夜も気になって、一週間で2回来てしまった」という声は、昼と夜の設計が意図通りに機能していることを示している。ドリンクは自家製チャイ・甘酒ラッシーが各400円で、料理との相性を踏まえた仕上がりになっている。
百名店の技術と、子ども連れへの目配り
スパイス専門店として料理の質に妥協しない一方で、子ども連れが安心して使える環境を整えている点が、この店のバランスの良さを示している。元学童の先生がスタッフとして在籍し、店内には絵本が置かれている。辛さは卓上スパイスで食べながら調整できるため、辛さが苦手な子どもと本格的なスパイス感を求める大人が、同じ料理を別の楽しみ方で味わえる。「スパイスカレー店に子ども連れで行くのは初めてだったが、意外なほど居心地がよかった」という声が目立つ。
専門店としての技術の高さと、地域の食堂のような温かさが、どちらも嘘なく同居している。その両立を可能にしているのが、百名店仕込みの調理力と、学童経験を持つスタッフの人柄なのだろう。
足立区千住仲町に根付く、住宅街のスパイス専門店
東京メトロ千代田線・JR北千住駅1番出口から徒歩約3分、足立区千住仲町45-11に位置する。駅に近いが住宅街の中にあるため、商業地特有の慌ただしさがなく、ゆっくりと食事ができる。火曜定休で週6日ランチを営業しており、平日昼でも立ち寄りやすい。店舗前への自転車駐輪が可能なため、近隣からの徒歩・自転車来店が自然な日常として根付いている。
「北千住でこういう専門店が歩いて行ける場所にあるのがありがたい」という評価は、立地の話でもあり、この店の地域での存在感の話でもある。


