香港の正統派広東料理を名古屋で受け継ぐ一軒
香港九龍の名人・呉錦洪氏から直接技術を受け継いだ会田政博氏が厨房に立ち、その調理哲学を次世代へ伝えている。フカヒレ、北京ダック、点心、さらにはアフタヌーンティーまで、茗圃が手がけるメニューの幅は広い。マニュアル化しにくい火入れのタイミングや調味のさじ加減を、季節ごとに変わる食材の状態を見ながら現場で教え込むスタイルを貫く。仕込みから盛り付けまでの全工程を一人の料理人が通しで担当するため、断片的な知識ではなく一連の流れとして技術が身につく構造になっている。
個人的には、徒弟制度という言葉がこれほど自然に機能している飲食店は珍しいと感じた。会田氏のもとで学んだ経験者からは「毎日の仕込みの中で、食材への向き合い方そのものが変わった」という声が聞こえてくる。コース料理の組み立てや高級食材の扱い方など、独立後にも直結する実践知を日常業務の中で吸収できる環境は、調理師学校では得にくいものだろう。
未経験者を職人へ育てるマンツーマン体制
茗圃の採用基準は経験値よりも人柄と向き合う姿勢に重きを置いている。未経験からスタートした先輩スタッフが複数在籍しており、入店後はマンツーマンで基礎から段階的に指導を受けられる。皿洗いや片付けといった地道な作業も技術習得の一環として位置づけ、先輩料理人がそばでフォローしながら進める形式だ。表面的なレシピの暗記ではなく、火加減や調味料の配合を体感的に覚えていく過程を重視している。
小籠包の皮の伸ばし方ひとつとっても、生地の温度や湿度で手の動かし方が変わるという。こうした細部まで口頭と実演で繰り返し伝えるため、習得には時間がかかる反面、身についた技術は一生ものになるという声が目立つ。将来の独立を視野に入れた相談にも応じており、店舗運営に関する知識まで共有してもらえる点は長期的なキャリア設計を考える人にとって見逃せない。
栄エリアの好立地がもたらす働きやすさ
名古屋市中区栄に店を構え、地下鉄東山線・名城線の栄駅から徒歩約13分。久屋大通駅からもアクセスでき、複数路線を使い分けられるため愛知県内各地からの通勤負担は軽い。近隣にはバス停もあり、電車以外の選択肢が確保されている。白川公園や久屋大通公園が徒歩圏内に位置し、休憩時間の気分転換にも困らない立地だ。
コンビニや銀行、郵便局といった生活インフラが周囲に揃っているため、勤務前後の用事を済ませやすい。飲食店が密集するエリアでもあり、仕事帰りに同僚と他店の料理を食べ歩く習慣があるスタッフもいるという。多様な食文化に日常的に触れられる環境は、自身の味覚や感性を磨く刺激になっているようだ。
休日・まかない・定休日から見る現場のリアル
定休日は毎週月曜日で、月曜が祝日にあたる場合は翌火曜日に振り替わる。休みの曜日が事前に確定しているため、プライベートの予定を組みやすいと感じるスタッフが多い。まかないは無償で提供され、日々の食事代を気にせず仕事に集中できる点は地味ながら大きなメリットだ。食に対する情熱と向上心さえあれば、経験の有無を問わず門戸が開かれている。
勤務日は仕込みの時間帯から営業終了後の片付けまで長丁場になることもあるが、業務の中で調理技術と食材知識が同時に蓄積されていく仕組みになっている。茗圃では一人ひとりの成長速度に合わせてタスクの難易度を調整し、無理なくステップアップできるよう配慮している。「最初は包丁の握り方から教わった」という未経験入店者のエピソードは、この店の育成方針を端的に物語っている。


